要注意!トレーニング用の首輪は問題行動の原因に!

犬の問題行動を直す唯一の効果的な方法は、問題の根本を突き止めることです。そうすることでその場しのぎではなく、長続きする解決法が見つかるのです。
要注意!トレーニング用の首輪は問題行動の原因に!

最後の更新: 25 3月, 2020

長い間、チョークチェーン首輪や電気ショック首輪は犬の問題行動を正すのに有効だと考えられていました。しかし、現在このような無駄吠え防止首輪によってしつけられた犬は問題行動が解決するどころか、新たな問題行動が出てくることが明らかになったのです。

 

トレーニング用の首輪とは?

トレーニング用の首輪はしつけのために用いられる首輪のことを指します。これらの首輪は犬の首に着けられ、問題行動を起こすと不快な感覚を犬に与えるのです。

電気ショック首輪は、飼い主が遠隔的にボタンを押すと首輪が振動したり、犬に電気ショックを与えたりします。または、犬が吠えることで起こる喉の振動により作動するものもあります。

スパイク首輪は犬がリードを引っ張ることで金属やプラスチックのスパイクが犬の首に食い込みます。また、犬の行動を直そうと飼い主がリードを引っ張っても同じことが起きます。一方で、チョークチェーン首輪は犬の首を絞め続ける首輪です。

このような首輪はしばらくの間は効果的だと考えられていました。これらの首輪で訓練を受けた犬は正しくしつけられていると考えられていたため、犬の訓練には長年使用されていたのです。しかし、現在ではこのような首輪には効果がないだけでなく、新たな問題を生み出すことが示されています。

電気ショック首輪
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実際には、今でもこのような首輪を訓練に用いるドッグトレーナーは多く存在します。しかし、ヨーロッパ諸国を含む世界の国々ではこのような首輪は違法とされていて、米国では特定の州でこれらの法律が施行されているというのが現状です。

トレーニング首輪はなぜ使われる?

飼い主が愛犬にトレーニング首輪を選ぶ理由はたくさんありますが、通常は大きな犬を飼っている隣人など、犬のしつけに関して専門知識を持たない人からの悪いアドバイスによるものです。または、新しい首輪を販売したい動物病院からの助言によることもあります。

一般に、このような首輪を選ぶ飼い主はリードを引っ張る、攻撃性が見られる、散歩中に元気がありすぎるなどの犬の問題行動を直そうとしています。

しかし、トレーニング首輪は問題行動の解決にはならず、せいぜい問題を隠す程度にとどまります。つまり、犬は電気ショックやスパイクが首に食い込むことによる不快感を得ないために“いい子”に振舞うだけなのです。

これでは問題行動が直ることはなく、カモフラージュされるだけです。首輪を外したり痛みを少なくしたりすれば、すぐに問題行動は戻ってきます。問題行動を直すには、根本的に取り組む必要があり、決して首輪だけでは解決できないのです。

トレーニング用の首輪により出現する問題行動

トレーニング首輪は犬が問題を起こしたときに使う首輪どころか、問題を悪化させたり、新たな問題につながったりする首輪でもあります。

トレーニング 首輪 問題行動

多くの場合、犬の問題行動は毎日の生活内に問題があることを示しています。たとえば、犬は日々ストレス、恐怖、痛みを感じているのかもしれません。例として、よく吠える犬はストレスが高いことが多く、このような場合に無駄吠え防止首輪を使ったとしても吠え続けるでしょう。無駄吠えという行動は一時的に抑えられても、無駄吠えの原因が解決されていないからです。

大きな問題の症状を抑えることは解決法ではなく、一時的な“絆創膏”になるだけです。犬がイライラしているのに問題を直さないでいると、吠える代わりに物を壊すなど、その問題は他の形として現れるでしょう。

また、犬を絶えずストレスフルな状況にさらすことで、以前は存在しなかった問題行動が浮上することがあります。これは行動理論パブロフの古典的条件付けの理論とも合致しています。

たとえば、リードを引っ張る犬に困っている飼い主がスパイクチェーン首輪を使ったとします。しかし、犬にしてみれば散歩をするたびに不快感や痛みが伴います。そして、自転車や他の犬が挨拶をしに近づいてくる、あるいは音に反応し驚いてしまったときにも同様に痛みが伴うのです。

すると犬の頭の中では、このような状況と痛みを関連付け始めます。見知らぬ犬が近づいてくると痛みを感じると考えてしまうのです。そして、首輪に締め付けられないよう、他の犬を避けるようになっていくのです。

この基本的な学習メカニズムから、犬は他の犬、子ども、自転車、ごみ収集車などに対して攻撃的になり始めます。どのようなものが犬の脳内で関連付けされるかは分かりません。

スパイクチェーン トレーニング 首輪 問題行動

トレーニング首輪を使用する犬に多く見られる感情は恐怖とストレスです。そして、この2つの感情は攻撃性、無駄吠え、リードを引っ張る、他の犬といると言うことを聞かなくなる、家の中の物を壊すなど、飼い主にとって困る行動の殆どを引き起こすのです。

トレーニング首輪の代わりは?

幸いなことに、動物心理学と犬の訓練は過去数十年にわたり進化してきました。正しい知識を持ったドッグトレーナーや犬をしつけたい家庭では、犬の問題行動を解決するために他の方法や道具を用いているのです。また、そのしつけには恐怖や痛みは伴いません。

犬の問題行動を直す唯一の効果的な方法は、問題の根本を突き止めることです。そうすることでその場しのぎではなく、長続きする解決法が見つかるのです。

獣医学研究では、トレーニング首輪を使用している犬は、使用していない犬より55%ストレスが多いことがわかりました。このようなトレーニング首輪は恐怖を呼び起こすため、他の多くの問題がさらに現れてくるのです。


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