新型コロナウイルスは「センザンコウ」が媒介している?
この記事を執筆している間にも、センザンコウやその他の動物が新型コロナウイルスの媒介になっているのかどうかについて、科学コミュニティでは調査が続いています。コロナウイルス自体は何十年も前から獣医界ではよく知られたウイルスです。
一般的に、コロナウイルスは特定の種の鳥や哺乳類に感染します。つまり、ヒト、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウサギ、フェレット、ウシ、シチメンチョウ、ブタなどに感染する特定の型があることが知られています。
今回は現時点で新型コロナウイルスについてわかっていることの簡単なまとめをご紹介したいと思います。
新型コロナウイルスの人間への感染
科学者が初めてコロナウイルスを特定したのは1970年代でした。その時から、人間に感染する4つのコロナウイルス(HCoV)の存在がわかってきました。これらの型は普通の風邪のような軽い症状を引き起こします。
興味深いことに、これらの病原性が低いHCoVには、動物に感染するコロナウイルスとも関係があるのです。様々な研究により、ゲノム配列の分析が行われています。これらの研究からわかることは、以下に挙げた動物がこの型のホストあるいは保菌者になるということです。
- HCoV-HKU1:げっ歯類が持っています。
- HCoV-NL63:コウモリが持っています。
- HCoV-OC43:げっ歯類が持っています。ウシも仲介します。
- HCoV-229E:コウモリが持っています。アルパカも仲介します。
人間への病原性が高いコロナウイルス
2003年と2003年までは、コロナウイルは人間にとって病原性が高いとは考えられていませんでした。しかしSARSコロナウイルスが中国の広東で始まり、アウトブレイクが起こったのです。
後の2012年、今度はMERSコロナウイルスがサウジアラビアとその他の中東諸国で出現しました。両方とも一般的にウイルスはコウモリから伝わったと考えられていました。さらに、以下のような動物も仲介役になっていたと言われています。
- SARSコロナウイルス:コウモリ、ハクビシン
- MERSコロナウイルス:コウモリ、ヒトコブラクダ
- 新型コロナウイルス:コウモリ、仲介役は不明
これらの先例から、新型コロナウイルスも動物が起源のものなのではないかという仮説が立てられています。実際、ゲノムが配列分析により、新型コロナウイルスもコウモリから来ているとされています。しかし、その仲介役がわかっていないのです。
仲介役になるとはどういうこと?
普通、ウイルスは同じ種の中で広まります。しかし時に合体し組み変わることで、他の種に感染することもあるのです。
これらのウイルスは以下のような2つの方法で動物から人間にうつる可能性があります。
- もともとウイルスを持っていた動物から直接、あるいはウイルスに感染しているその分泌物から。
- 仲介役や媒介になっているその他の生物を通して。
ウイルスの遺伝子は部分的に分かれているということを指摘しておくべきでしょう。ですので、この分かれているゲノムが、ウイルスが他のウイルスと合体したり組み換えを行ったりすることで新しいウイルスを作ることを可能にしているのです。ほとんどの場合、2つの異なる種のウイルスが同じ人や動物に同時に感染します。これが共感染として知られている事象です。
その結果、新しいウイルスは新しい性質を持ちます。例えば、人間にも感染する力をつけ、感染力が高くパンデミックを引き起こすようなウイルスになるかもしれないのです。ウイルスは新しい構造を持っているので、ほとんどの人はほぼ、あるいは全く感染に対抗する術を持っていません。
センザンコウはコロナウイルスの媒介なの?
疫学的研究により、最初の患者の多くは武漢の海鮮卸売り市場にある野生生物に触れていたということが明らかになっています。この場所は中国の中心にある最も大きな海鮮市場です。そこでは様々な種類のコウモリ、バイソン、ヘビ、中国タケネズミなども展示されています。
そこでは色々な種類のネコやハリネズミ、イヌ、鳥などの動物が売られていることも普通です。こういった市場は「ウェットマーケット」として知られています。こういった場所では昔から生きている動物も死んでいる動物も外で売られてきたのです。
様々な動物の血液や体液が、感染の格好の源になっていることは想像に難くないでしょう。
ただし、センザンコウは市場で売られている動物のリストには入っていないのです。これはおそらくこの動物の販売が違法だからでしょう。そして2020年の1月からは、武漢の地方自治政府によってこの武漢の海鮮市場は閉鎖されていました。
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センザンコウがコロナウイルスの媒介になっていることを示す証拠
北アメリカの科学者グループが、新型コロナウイルスについて重要な発見をしています。新型コロナウイルスのゲノム配列とセンザンコウのデータベースから再構成したコロナウイルスのゲノムが酷似しているということがわかったのです。
香港大学の研究グループも、センザンコウの組織を使用してウイルスを特定しています。彼らのウイルスゲノム配列の分析により、新たな2つのコロナウイルスの存在がわかりました。これらのゲノムは新型コロナウイルスと85.5~92.4%の類似性があるのです。
つい最近では、中国の広州での調査からも、センザンコウが人間に感染する新型コロナウイルスの媒介になっている可能性が高いと言われています。センザンコウのコロナウイルスが新型コロナウイルスと非常に関連性が高いことからこのような結論に至りました。
この情報は北京の中国農業大学の学部長の声明から来ています。しかし、彼の声明はなんの科学的記事にも報告されていません。また、遺伝子分析はまだ途中なので、この情報は注意して扱う必要があるのです。
センザンコウがコロナウイルスの媒介になっている場合、どのように感染が起こるの?
センザンコウは地球上で最も密輸されている動物でもあります。この小さな哺乳類は逃げ足が速く、夜行性で、鱗のような皮膚を持っています。不運なことに、この動物の体の様々な部位が、伝統的な医療においては治癒力を持っていると信じられています。鱗については特にそうですが、他にも胎児、骨、爪なども含まれます。センザンコウがコロナウイルスの媒介になっているなら、それは人間がこの動物を利用している方法にその原因があるということになります。
さいごに
コロナウイルスの出現は、動物と人間の健康、生態系の状態、そして人間の慣習の間の近い関係性を示すいい例です。
今や、長い間多くのウイルスがその自然な宿主の中に存在してきたことはわかっています。そして人間の行動が、その宿主から人やその他の動物へ感染を広めてしまう原因になっていることもまたわかっています。それには近代の農業のやり方や都市化なども含まれます。
ですので、ウイルスの人畜共通感染症を防ぐ最も効果的な方法は、自然のウイルスの宿主と人間社会の境界を保つことです。
センザンコウが本当にコロナウイルスの媒介であるなら、この動物の扱いを非常に注意して行う必要があるということです。ですので、センザンコウの売買は中国でもその他の国においても厳格に禁止される必要があります。
※2020年3月26日の最新情報:センザンコウは新型コロナウイルスに類似したウイルスを持っていることが科学者により確認されました。
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