犬の遠吠えの意味
誰もが聞いたことがあるでしょう。まずは１匹の遠吠えから始まるのです。そして、徐々に２匹、３匹とどんどんと増えていくのです。遠くや近くの犬がコーラスのように一斉に集団で鳴き、まるで長い会話をしているかのようです。犬たちはいったい何を喋っているのでしょうか。
遠吠え
ご存知の通り犬はオオカミを起源にもちます。最新の理論では、人間を恐れなかった野生のオオカミは村や住居地の周辺に住みつき、人間の出すゴミを貴重な食糧にしていたと言われています。やがて人間は家の周りを徘徊していたオオカミが狩りに役立つ可能性に気付き、そこから人間とオオカミが共生を始めたのでした。
現代の犬の遠吠えは、実際にはオオカミの名残だとも言えます。結局のところオオカミは吠えません。犬は進化の過程で吠えることを身につけたのかもしれません。これは狩猟犬がコミュニケーションをとるために必然的に見に付けたとも考えられます。飼い主に獲物のありかを知らせなくてはいけなかったからです。こうして人間は、犬が発する音に注意を払って聞くようになったのです。
実は、今も吠えない犬種もあります。これは“原始的な”犬で、北欧のサモエド、ハスキー、マラミュートなどです。この犬たちは確かに様々な音を発しますが、吠えることだけはしないのです。
犬の遠吠えは交信
遠吠えは、基本的には交信です。犬もオオカミも、遠吠えを介して家族や群れの仲間の居場所を確認します。
犬が遠吠えをする理由
- 助けを求めている
- 近くにいる犬やオオカミの居場所を知るため
何か問題があったり苦しんでいたりする場合、犬は通常、鳴いて助けを求めます。家に一人でお留守番するのが嫌な犬は頻繁に鳴いて飼い主を呼び求めます。もちろん、飼い主はその鳴き声の意味が分からなかったり、そもそもその鳴き声が聞こえてもなかったりもするのですが、それでも犬は鳴き続けるでしょう。どこかに閉じ込められてしまった犬や、何かの問題に直面し解決法が見い出せない犬も同じことをします。
オオカミが遠吠えをすることで群れの仲間の位置を確認するビデオを、インターネットで一度は目にしたことがあると思います。犬も同じことをします。一匹の犬が遠吠えを始めると、近場や、時には遠くの犬まで遠吠えに参加する理由が正にこれなのです。
一匹の犬が助けを求めて、または近くにいる仲間の所在地を知りたくて遠吠えをすると、他の犬は遠吠えで答えるのです。そして、遠吠えがどのくらいの距離から聞こえてくるかによって、遠吠えコーラスを始めた犬は自分が一人なのか、近くに仲間がいるかを確認できるのです。
自然界ではこのようにして犬やオオカミは仲間と会います。しかし、現代の犬の殆どは家の中や庭に閉じ込められているため、遠吠えで群れの仲間の位置を特定できたとしても、逃げ出さない限り、実際にお互いに会うことはできません。
本能からの遠吠え
犬のライフスタイルからみても遠吠えは決して役立つものではないので、遠吠えは本能からの行為と解釈していいのではないでしょうか。もし犬が何かをやっている途中に突然それを止めて遠吠えを始めたとしても、それは自発的なことではなく、古来の本能に基づく行動なのです。
同じように、他の犬の遠吠えに反応してしまうのも本能なのです。そして、夜になると遠吠えをかき消す騒音も減ってくるため、夜に聞こえてくる遠吠えに犬は反応せざるを得ないのです。
ここで言えるのは、頻繁に遠吠えをする犬はなんらかの問題がある犬なのです。痛みを感じているのかもしれませんし、寂しいのかもしれません。あるいは、お腹が空いているのかもしれません。このような犬には満たされたい欲求があり、助けを求めるために遠吠えをしているのです。
救急車のサイレン
救急車、消防車、警察などのサイレンが鳴るたびに遠吠えをする賑やかな都市に住んでいる犬も多くいます。
これも犬の本能的な反応です。サイレンは犬の遠吠えによく似ているからです。犬にとって街中から聞こえてくるあの音は、仲間が助けを呼んでいるように聞こえるのです。だからこそ、人間には理解しにくいかもしれませんが、犬は反応しないわけにはいかないのです。唯一の救いは、それが長く続かないということです。サイレンはあっという間に通り過ぎ、サイレンが遠ざかる頃にはそれをかき消す騒音が近くにあるのです。
これでお分かりいただけたでしょうか。どうして犬が夜に遠吠えをするか。そして、遠いところから始まったはずの遠吠えが、気が付けば自分の家の窓のすぐそこまで来る理由を。遠吠えは犬にとって安心するものであり、近くに仲間がいるよと知らせるものなのです。
最後に、遠吠えは犬の本能であることを忘れないでください。遠吠えをしている犬を叱ったり、黙らそうとしたりしても意味がないのです。遠吠えは、犬にとってサバイバルなのです。
主な画像ソース：nathanmac87